●トゴール・ウォームタイトの成り立ち
●天然温泉はどんな性質をもっているのか
●天然温泉には老化現象がある
●「トゴール湯」の組成
●「トゴール湯」は天然温泉とどう違うか
●医学的にみた「トゴール湯」の効果
●温度生理学的にみた「トゴール湯」浴と温泉浴の比較検討の成績
「トゴール湯」の元になる鉱石は、新潟県栃尾又温泉付近に産出する風化鉱物であるトゴール・ウォームタイトです。「トゴール湯」はこれを細かく砕いて小石状にし、淡水(湯)を加えたり通したりして、トゴール・ウォームタイトに含まれている無機塩類を溶かし込んで入浴用に提供するお湯のことです。すなわち、「トゴール湯」は、水道水にトゴール・ウォームタイトという天然の鉱石の化学成分を溶かし込んだものであり、組成が天然温泉のものと似ています。
「トゴール湯」を作り出すという発想は、既に確立されている無機塩類を主とした天然温泉の含有成分がもっている保健作用を、規模は小さいが、人工的に再現しようとしたものです。
このようなアイディアを実際に応用する「トゴール湯」供給システムは、特殊な機械装置により湯を循環させ、使用後の湯を濾過、消毒していつもきれいな湯に再生供給させるシステムです。
温泉とは「地中から湧き出る温水、鉱水、水蒸気やある種のガス成分(メタンガスやプロパンガスなどの炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、泉源での温度が25℃以上のものか、またはその中に特定された溶存物質が基準値以上含まれているもの」です。
地下水が温泉水に変化していく途中で、岩石や地層の割れ目を通過すると、周囲の岩石の種類により、それぞれ特色のある化学組成を有する温泉水となります。火山性の温泉では火山性揮発物である塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などがみられます。塩化水素は溶けると塩酸になり、二酸化硫黄は酸化されると硫酸となりこれらはいわゆる酸性泉となるわけです。非火山性の温泉では、地下水あるいは化石海水が加温されたものがあり、その化学成分は普通の地下水や海水と組成が類似していることが多いのです。
天然温泉は地下深く、圧や温度の高いところで生成される高温高圧水です。このような条件下での温泉水中に含まれる化学成分の溶存状態は、1気圧100℃といった地表での場合と明らかに異なります。すなわち、地下深部ではガス成分も多くその溶解度も高いのですが、地表で湧き出ると圧力が低下してガス成分は揮散したり、過飽和の状態であった成分は沈殿するようになったり、空気中の酸素に触れると酸化されて別の物質になり、生理活性を失うものもあります。
天然温泉は地下深部にあるときは安定ですが、一旦地表に出ると極めて不安定な溶液となってしまいます。物理的に不安定なものは、時間とともに安定な状態になろうとします。その際にエネルギーが放出されますが、このエネルギーが生物活性をもつと考えられています。天然温泉で、物理学的な不安定度が高いほど刺激性が強く、涌出後に安定な溶液になると効能は低下するが消滅してしまうのもあります。
「トゴール湯」の原石は鉱物学的にはトゴール・ウォームタイトといわれるもので、X線回析法で分析しますと、鉱物としての組成の主なものは、石英、斜長石、蛋白石などからなり、粘土鉱物としてはモンモリン石、コオリンなどが存在することが分かっています。
このトゴール鉱石をまず徹底的に乾燥して粉末にし、その無機塩類を分析すると、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどが主な組成分として含まれていることが分かりました。さらに、粉末状にしたトゴール鉱石を42℃で蒸留水に溶出し、2時間後と24時間後にその涌出物質を検査すると、pH酸性度は6.84と7.22とほとんど中性あるいは軽いアルカリ性で、陽イオンとしては、シリカ、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄などが主な組成として検出され、トゴール水は一種のミネラルウォーターであることが分かります。
以上の分析結果から、淡水がトゴール・ウォームタイト鉱石に接してその成分を溶出する際に出来る「トゴール湯」は天然温泉と似た性質をもっているということが出来ます。また、温泉地などに行かないで一般の家庭でも温泉に類似した効果を期待できる一種の入浴剤ともいえます。
「トゴール湯」はトゴール・ウォームタイトの無機質成分を溶かし込んだ水ですが、天然の温泉と違って空気に接したり時間が経つにつれて沈殿したり、揮発するような物質は含まれていないので物理学的に極めて安定している溶液です。
「トゴール湯」は無色、無臭、無味であり、どんな人の肌にも強い刺激性はなくて優しいといえます。「トゴール湯」には、イオンとしてシリカ、ナトリウム、カリルム、カルシウム、マグネシウム、鉄イオンなどが主に含まれていますが、これらはいずれも多くの天然温泉に含まれているイオンと同様です。つまり、天然に存在する鉱石由来の「トゴール湯」は人工的な操作を加えていますが、天然の温泉によく似た化学成分を含んだ安定したミネラルウォーターであるといえます。
「トゴール湯」にはシリカが含まれているので湯はまろやかとなり、肌への刺激性を和らげます。からだを芯から温め、浴後のぬくもりが長く続きます。また、「トゴール湯」は酸性度は中性ないし軽いアルカリ性ですが、これも皮膚への刺激は少なく肌を滑らかにします。浴後にはさっぱりした爽快感が得られます。
「トゴール湯」に含まれるミネラルにより、一般の淡水に比べて皮膚末梢血管の拡張作用が強く、血流を増加させます。これはひいては全身の血液循環を促進し血行を改善することになります。皮膚末梢血管が拡張すると心臓への負担が少なくなります。これに伴って、末梢組織への血行が良くなり、新陳代謝が促されて、からだの隅々まで酸素や栄養分が行き渡るようになり、老廃物の排出が増すようになります。筋肉や関節部も柔らかくなり、仕事や運動などによる筋肉の凝り、筋肉や関節の痛み、疲労の解消にも役立ちます。
「トゴール湯」に比較的多く含まれているミネラルのうち、カルシウムやマグネシウムイオンは鎮静作用があり、仕事やスポーツの後の疲労、ストレスの解消に良く、就眠前に入浴すると熟睡を誘います。筋肉痛、関節痛などにも効果があります。
温度生理学的にみた「トゴール湯」浴と温泉浴の比較検討
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実際に温度生理学的に「トゴール湯」浴と温泉水浴を比較検討した結果、単なる温泉浴水に比べて、温泉水にトゴールを加えた湯に入浴すると、体温の上昇と浴後の保温性が高まることが分かりました。なお、心循環系にはなんら負担は掛かりませんでした。「トゴール湯」は、入浴しても刺激性がなく、からだを芯から温め、しかも浴後の保温性を持続させる湯であることが分かります。心臓や血圧に負担がかからないので体調や体力に関係なく利用出来るいわば万人向きの湯であり、一般家庭にはもちろんのこと、老人福祉施設、健康保養地などでの大規模水浴施設などでの活用が期待されます。
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